第百二十三回 中山ふれあいサロン「歴史講座」

平成30年1月15日
瀧  義 隆

平成30年NHK大河ドラマ「西郷(せご)どん」に因んでメインテーマ「明治という新時代の創設について」
「西郷隆盛の生い立ちと略歴」について

はじめに

NHK大河ドラマでは、平成二年(1990)に西郷隆盛を主人公とした、西田敏行主演の『翔ぶが如く』が放映されており、西郷隆盛については、今回の「西郷(せご)どん」で二回目となる。
薩摩藩という日本の南端に位置する地方から、また、下級武士の出身の一田舎侍が、自身の政治的能力と猛烈な努力とによって、我国の近代化をもたらす「明治という新時代を創設」する中心人物とまでになる稀代の英傑は、大河ドラマの一フアンとして誠に魅力のある大河ドラマとなることを期待させるものである。

そこで、今回の「歴史講座」では、まず、「西郷隆盛の生い立ちと略歴」について述べることとし、大河ドラマを一年間楽しむ為の参考としていただきたい。

1. 「西郷隆盛の生い立ち」について

2:「西郷家の家柄」について
西郷隆盛の家系について、『姓氏家系大辞典』によって調べると、「酒井氏流 薩隅の西郷氏にして、建久大隅國圖田帳に「桑西郡國方所當弁田、酒井末能所知」とあるをば、(中略)
その後、國分郷上井村韓国大明神記録に西郷大膳あり。後世島津氏に仕へ、維新の際、西郷隆盛・従道・兄弟あり、隆盛の子寅太郎、その子隆輝、従道の子従德、共に侯爵に烈せらる。」
太田 亮著『姓氏家系大辞典 第二巻』角川書店
昭和五十一年 2436P

とあって、薩隅の西郷氏の祖先を酒井氏の支流と位置付けしているが、一方では、鎌倉時代末期から南北朝時代に活躍した武将である菊池武光が祖先であるとする説等があり、明確ではない。家柄は、薩摩藩の士分(武士の身分)では下から二番目の「御小姓与(組)」である。そこで、薩摩藩の武士制度をみると、

※「上士」と称される階級
「御一門」・・・・・・・ 四家
「一所持(いっしょもち)」・・・・・・二十一家
「一所持格(いっしょもちかく)」・・・約二十家
「寄合(寄合・寄合並)」・・・・・・・約六十家

※「城下士」と称される階級
「無格(むかく)」・・・・・・・・・・二家
「小番(こばん)」・・・・・・・・・・約七百六十家
「新番(しんばん)」・・・・・・・・・約二十四家
「御小姓与(組)」・・・・・・・・・・約三千家
「与力」・「足軽」・「私領士」(赦免士や座附士とも准士分と称される者で、詳細不明)

2:「西郷家の家族」について

父・西郷九郎隆盛(吉兵衛隆盛)
御勘定方小頭(禄47石余)
母・満佐子(満佐・マサ・政子)
長男・・隆盛(詳細後述)
長女・・コト(琴)
島津斉彬の側近である市来正之丞の妻となる。
次男・・隆廣(通称は吉二郎)
安政元年(1854)頃は、御勘定所書役、慶應四
年・明治元年(1868)八月十四日、戊辰戦争で越後に出兵して負傷し、これがもとで戦死した。
次女・・タカ(鷹・高)
御小姓与よりも上の家格である、小番(こばん)の家柄の三原伝左衛門の妻となる。小番とは、殿様の日常の世話をする役。
三女・・ヤス(安)
叔父の長男の大山成美(にいび)の妻となる。
三男・・従道(じゅうどう・つぐみち)(通称は信悟 号
は龍庵)
島津斉彬の茶坊主となり、龍庵を名乗っていた。
文久元年(1861)九月三十日に還俗して尊王攘夷運動に参画、鳥羽・伏見の戦いで重傷となるも回復し、明治維新後は、兄の隆盛と共に政治の世界で活躍する。
四男・・小兵衛(隆雄(たかかつ)・隆武)
戊辰戦争が初陣で、明治二年(1869)に分隊長に昇格、西南戦争の時に銃弾を受けて戦死する。

以上の他に祖父母を加えた、11人家族で暮らしていたので、
西郷家の生活は大変な貧困に苦しんでいた。

2. 「西郷隆盛の略歴」について

1:「西郷隆盛の略歴」について
文政十年(1827)十二月七日
薩摩国鹿児島城下加治屋町で、七人兄妹の長男として誕生した。
諱(いみな)が「隆永」、明治維新後に「隆盛」と名乗る。
幼名・・「小吉」→「吉之介」→「善兵衛」→「吉兵衛」→「吉之助」
号・・ 「止水」→「南州」
天保十年(1839)・・12歳
郷中の月例のお宮参りの時に、友達が喧嘩となり、仲裁に入った時に刀が隆盛の右腕内側の神経を斬ってしまい、3日間高熱を発して生死の境を彷徨った後、命は助かったものの、右ヒジが曲がらなくなり、以後、武術を諦めて学問で身を立てることにした。
弘化元年(1844)・・18歳
郡方書役助(こおりかたかきやくたすけ)に任命される。郡方書役助とは、現在の農政事務所の事務官を補助するような仕事で、アルバイトのような役目でしかなかった。
安政元年(1854)・・28歳
藩主の島津斉彬に従って江戸に上り、庭方役(にわかたやく)として政界工作に奔走する。庭方役とは、藩主が用事がある時に縁側に出てきたら、直ぐに傍に行って聞き取るように庭先で待機している役である。
安政五年(1858)~安政六年(1859)・・32歳~33歳
安政の大獄で幕府に追われ、同志であった京都清水寺成就院の住職「月照」と共に激寒の錦江湾に身投げしたが、隆盛のみ助かる。薩摩藩は、隆盛を「菊池源吾」と改名させたうえで、奄美大島に逃れさせた。
文久二年(1862)・・36歳
正月、名前を「大島三右衛門」と変えて奄美大島から帰還して、徒目付、庭方兼務となった。
六月、島津久光の怒りをかい、徳之島と沖永良部島に流罪となり、知行・家財等、全てを没収された。
元治元年(1864)・・38歳
罪を許されて帰還し、京都における藩の責任者として、「軍賦役・小納戸頭取」なる。
慶應三年(1867)・・41歳
倒幕軍の参与となる。参与とは、王政復古の時の「三役」の一つで、朝政の事務に携る役目であった。
明治元年(1868)・・42歳
戊辰戦争を東征総督府参謀として指揮する。江戸城無血開城を決断する。
明治四年(1871)・・45歳
廃藩置県実行の為に、薩摩軍を率いて上京する。明治政府の正三位参議となる。参議とは、明治政府内で実質的に政務を統括する重職であった。
明治六年(1873)・・47歳
「征韓論」を発議するも中止となり、明治政府を辞任し、鹿児島に帰る。
明治七年(1874)・・48歳
鹿児島に私学校を開設し、士族子弟の教育にあたる。
明治十年(1877)・・51歳
私学校の生徒等を率いて蜂起したものの、官軍の総攻撃を受けて、鹿児島の城山で自決する。

2: 「隆盛の三人の妻」について
(イ)一回目の妻
「すが(須賀)」
・・伊集院兼善の娘
嘉永三年(1850)、隆盛24歳、「すが(須賀)」21歳
西郷家と伊集院家とは距離的に近かったことから、隆盛が「すが(須賀)」に一目ぼれした、とされている。
西郷家があまりに貧しかった為に、伊集院兼善は「すが(須賀)」を実家に引き取り、この結婚は、わずか二年で離婚となった。
(ロ)二回目の妻
「あいかな(愛加那)」
・・安政四年(1857)、隆盛31歳、「あいかな(愛加那)」23歳
藩から奄美大島に潜伏を命じられた隆盛の身の回りを、農家の娘の「あいかな(愛加那)」が世話するうちに、二人は結ばれてしまった。この結婚は、文久元年(1862)、薩摩藩から召喚命令が出たことから、隆盛は奄美大島を離れることとなり、この結婚は終局となる。
※薩摩藩の島妻(あんご)制度により、島を離れる時は、薩摩に連れて帰ることは許されなかった。
子供・・菊次郎
菊草(きくそう・きく)
(ハ)三回目の妻
「糸子(イト・以登・絲子)」
・・岩山八郎太の娘。
文久三年(1863)、隆盛37歳、「糸子」21歳
薩摩藩士の有川矢九郎が、自分の妻の従妹にあたる「糸子」を連れてきて結婚させた、と伝えられている。
子供・・長男 寅太郎
次男 午次郎(ごじろう)
三男 酉三(ゆうぞう)

まとめ

前年の「平成29年 NHK大河ドラマ おんな城主 直虎」は、浜松の井伊谷(いいのや)という、地域限定とする狭い範囲の領地を死守する「おんな城主」を主人公と設定したことから、その史料不足もあった為か、ドラマのストーリーが細々となり過ぎて、「大河ドラマではなく、小河ドラマとなってしまっている。」との酷評を受けるような結果となってしまった。【讀賣新聞 平成29年11月16日(木)朝刊 アンテナ 放送評論家 鈴木嘉一氏】
その点、今年の「西郷(せご)どん」は、NHK大河ドラマに相応しい題材であり、主人公のスケールからして、物語が広範囲にわたるものと思慮され、面白いものとなることは充分に期待できるのではなかろうか。

参考文献


田中惣五郎著『西郷隆盛』日本歴史学会編集
人物叢書 新装版 吉川弘文館 1985年
上木嘉郎著『西郷隆盛 「無私」と「胆力」の人
鹿児島人物叢書 高城書房 2008年
安藤英男著『西郷隆盛』人物文庫 1997年
北 康利著『西郷隆盛 命もいらず、名もいらず
PHP文庫 2013年

次回予告


平成30年2月19日(月)午前9時30分~
平成30年NHK大河ドラマ「西郷どん」に因んで
メインテーマ「明治という新時代の創設について」
「西郷隆盛の周囲の人々」について

参考資料

明治三十二年(1899)、上野公園で西郷隆盛の銅像の除幕式が行われたが、その時に招待されていた、三番目の妻であった「糸子」さんは、「宿(うち)ンしはこげんなお人じゃなかったこて!」、と言ったと伝えられている。また、実子の菊次郎の話しとして、「父、隆盛は写真が大嫌いで、生前の写真は一枚もない。」と言っていた。とも伝わっている。
『ビジュアル 日本の歴史 16 近代国家への道6』
デアゴスティーニ(株) 2000年 226~227P

西郷隆盛の顔一覧

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