明智光秀の謀叛の原因と終焉の地について

第百四十五回 中山ふれあいサロン「歴史講座」
令和二年12月7日
瀧  義 隆

令和二年NHK大河ドラマ「麒麟がくる」についての歴史的考察
歴史講座のメインテーマ「明智光秀の合戦絵巻」
今回のテーマ「明智光秀の謀叛の原因と終焉の地について」

はじめに

本来なら、NHKの大河ドラマは年末に最終回を迎えるのであるが、今年は新型コロナウイルス感染防止の為に、放映が中断されたことから、「麒麟がくる」の最終回は来年の2月7日へと延期される。

「麒麟がくる」の原作者、池端俊策氏は明智光秀を従来の謀叛人と固定する概念を脱却して、むしろ平和な国を創設するであろうと期待した織田信長に替わって、明智光秀自身が「麒麟を招来する」武将として位置付けしょうと、大胆に発想の転換を図ったドラマに仕立ている。

そこで、今回の「歴史講座」では、「麒麟がくる」の最終回を意識して、明智光秀が何故に織田信長に対して謀叛を起こしたのか?の原因と、その結末はどうであったか?について見てみることにしたい。

「明智光秀の謀叛の原因」について

明智光秀は、織田信長を本能寺で討ちとろうと、謀叛の大暴挙に出ている。その暴挙の原因ははたして何であったのか?この項で迫ってみたい。

明智光秀が織田信長に謀叛をたくらむ原因となったのは、何であったか?を、史料としての『明智軍記』の中に見ると、

「惟任日向守企謀叛事係リシ程ニ、(中略)光秀ハ先月甲府ニテ、無利シテ面目ヲ失フ事有リテ、憤リノ心深リケレトモ、(中略)御前ナル小々姓四、五人立チテ、扇ニテ光秀ガ頭ヲゾ打ニケル.其中ニ森蘭丸モ座席ヲ立テ、扇ヲ取直シ、銕ノ要ヲ以テ、健ニ打ケレバ、頂上破レテ血流落ケルヲ、信長公御覧シテ、罷立候ヘト御意ニヨリ、則退出申ニケリ。(中略)斯テ同月十九日、東照大君ヲ饗応馳走儀、惟任日向守ハ召離サレ、織田上総介ニ被仰付ケリ。 (中略)処ニ触状ニハ、次第不同ノ端書モナク、光秀仮名ヲハ半ニ戴ラルヽ事、無法ノ儀ニ非ズヤ。剰、秀吉ガ可任指図旨、奥書ニ記サルヽ事、旁以テ無念ノ次第也。其上、今度徳川殿御馳走ノ品々故ナクシテ召上ラル、条、万ヅ生涯ノ恥辱トコソ存候ヘト、(中略)丹波・近江ハ召上ラルヽノ由ヲ、申捨テゾ帰リケル。爰ニ於テ、光秀並家子・郎等共闇夜ニ迷フ心地シケリ。其故ハ、出雲・石見ノ敵国ニ相向、軍ニ取結中ニ、旧領丹波・近江ヲ召上レンニ付テハ、(後略)」

二木謙一校正『明智軍記』新人物往来社 1995年 295~298P

以上のように、『明智軍記』に示している明智光秀の謀叛の理由として、「面目喪失」・「森蘭丸等の暴力によって頭から流血する事件」・「徳川家康の饗応援役の解任」・「豊臣秀吉の配下命令」・「丹波・近江の領地没収」等を列記している。しかし、これらの理由を示した『明智軍記』を傍証する史料は見つかっていない。

「明智光秀の謀叛の原因」についての諸説

続いて、この項では、明智光秀は何故に謀叛を起こしたのか?その原因はなんだったのか?について探ってみると、次のような
諸説に別れている。

(イ)「怨恨説」

波多野氏を攻めている時に、人質として明智光秀の実母を八上城に送ったが、織田信長は波多野兄弟を処刑してしまった為に、波多野氏方は光秀の実母を磔にして殺してしまった。この事を明智光秀は深く怨みに思っていた事が謀叛の原因である、とする説である。

(ロ)「野望説」

『太田牛一雑記』に書かれている「欲に耽りて天下之望を成し、」とあるのを根拠として、明智光秀には天下取りの野望があったから謀叛を起こした、とする説である。

(ハ)「朝廷黒幕説(光秀勤皇説)」

織田信長が正親町天皇に譲位を迫っていたが、天皇がこれを拒絶し対立していた事から、朝廷が黒幕となって、明智光秀に信長打倒をそそのかした、とする説である。

(二)「足利義昭黒幕説(光秀幕臣説)」

織田信長によって京都を追放されて、毛利氏に寄宿していた足利義昭が、明智光秀を利用して織田信長を滅亡させて、将軍職に復権しようとした、とする説である。

(ホ)「秀吉黒幕説」

史料的には明確な根拠となるものもないが、「本能寺の変」の後に中国遠征にあった豊臣秀吉が、あまりにも早く「とんぼ返り」して「山崎の合戦」に対応し、天下を掌握したことから、この筋書きは豊臣秀吉が策謀したものだ、とする説である。

(へ)「四国動乱説」

明智光秀は四国の長宗我部と親交が深かったが、織田信長が三男の織田信孝や丹羽長秀等に四国攻めを命令した事を中止させる為に謀叛に至った、とする説である。

(ト)「家康謀殺計画からの発展説」

織田信長が明智光秀に命じて、徳川家康を本能寺に招いて、暗殺させようとしたが、明智光秀は、いずれ明智一族も滅ぼされてしまうであろうとする危機感から、悩んだ末に謀叛に及んだ、とする説である。

(チ)「突発的単独犯行説」

「本能寺の変」における明智光秀の行動が、天下を狙うにしては、あまりにも無計画である事からして、「今が信長を討つチャンスだ」と突発的に考えて謀叛に及んだ、とする説である。

(リ)「陰謀露顕説」

織田信長が、日本統一の後に中国大陸に侵略する計画を持っていて、これに反対する為に徳川家康と手を結ぼうとした計画が露顕しそうになったので、先手をきって謀叛に及んだ、とする説である。

(ヌ)「政権奪取説」

織田政権には、様々な問題が内在していて、必ずしも安定的な政権ではなく、これらの問題を解決する為に謀叛に及び、朝廷や足利義昭をまきこんで、政権を奪取する為に謀叛に及んだ、とする説である。

(ル)「武士の面目説(絶望・武門の意地説)」

明智光秀は、四国の長宗我部に領地安堵の仲介役をしていたが、織田信長はこれを反故にしてしまった為に、明智光秀の面目は丸つぶれとなってしまった。更に、光秀の丹波・近江の領地を没収して、出雲・石見への移動を命じられ、光秀の「武士としての面目」を打ち砕かれた事が原因となって、謀叛に及んだ、とする説である。・・・・・・・・資料①参照

本能寺の変、それぞれの説
本能寺の変、それぞれの説

以上のような諸説の他にも、「明智光秀の謀叛の原因」には「本願寺黒幕説」や「イエズス会黒幕説」等、多数存在しているが、これらは明確な史料による論証ではなく、言うならば興味本位的論説でしかない、と言わなければならない。

「明智光秀の終焉」について

この項では、明智光秀の終焉について述べることとしたい。明智光秀の終焉について調べてみると、

『「本能寺の変」の後に、豊臣秀吉との「山崎の合戦」に敗れて、自分の居城である坂本城に向かって敗走する途中の小栗栖(現在の京都市伏見区 明智坂)の藪の中で、土民の落武者狩りにあって竹槍で刺され、逃れようとしたものの力が尽きてしまい、家臣の介錯により自刃した。』とするのが定説となっている。しかし明智光秀に関する多くの専門書を読んでみると、明智光秀の終焉の地については他にも多くの説が存在していて、どれが本当なのか?全く不明としか言いようがないのが現状である。
そこで、その諸説を下記に示すと、

  • (イ)京都の「妙心寺」に逃れて、天正十一年(1583)六月十四日に死亡した。
  • (ロ)比叡山の「松嶺院」で修行し、慶長三年(1598)に豊臣秀吉が死去した後、行方不明になった。
  • (ハ)大坂和泉鳥羽の「大日庵(海雲寺)」に逃れていて、死去については不明である。
  • (二)和泉国助松(現在の大阪府泉大津市)にあった、「助松庵」に逃れて、ここに潜伏していたが、行方不明となった。
  • (ホ)美濃国武芸郡洞戸村(現在の岐阜県関市洞戸)の明智岩という所に家臣と共に潜んでいた。
  • (へ)美濃国中洞(現在の岐阜県山県市中洞)の「仏光山西洞寺」に隠れていた。
  • (ト)比叡山の「長寿院」に逃れて、元和八年(1622)に死去した。
  • (チ)比叡山に逃れたが、以後、「天海」と称して、徳川家康に仕えることとなった。
  • (リ)比叡山ではなく、丹波国周山(現在の京都市右京区)にある「慈眼寺」に入り、後に「天海」と称した。

以上のように、根拠となる史料も不明確な様々な説が示されいるのである。

まとめ

この『中山ふれあいサロン「歴史講座」』も、「新型コロナウイルス感染予防」の為に、令和二年三月から、当分の間中止となり、とうとう今年実施できたのは、二月までのたった二回で終わってしまった。

NHK大河ドラマ「麒麟がくる」も、途中中断を挟んで再開したものの、終盤にかけてのドラマ進行は、何となく「バタバタ」感が否められず、戦国ドラマとしての重厚感が乏しくなったように思われてならない。「新型コロナウイルス感染」さえなければ、まだまだ我々大河ドラマフアンをテレビに釘づけさせるようなものであった、と推察され、その意味からも残念な一年であった、と言わなケればならない。

はたして、来年には、ワクチンの開発が進んで、「新型コロナウイルス感染」は収束に向かうのであろうか?高齢者にとって、NHK大河ドラマは、大きな娯楽の一時である。何とか医科学の力で一日でも早く「新型コロナウイルス」を撲滅して欲しいものである。医科学の力が駄目だとすれば、残るは「神頼み」。この際、皆で「あまびえ」様に祈る以外に方法はないのか?

参考文献

  • 川口素生著『明智光秀は生きていた! 謎につつまれた生涯とその最期』KKベストブック 2019年
  • 小林正信著『明智光秀の乱』里文出版 2014年
  • 浜野卓也著『明智光秀―本能寺の変―』講談社 1991年
  • 藤田達生著『本能寺の変』講談社学術文庫 2019年
  • 橋場日明著『明智光秀 残虐と策謀 ―一級史料で読み解く―』祥伝社新書 2018年

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