耳を澄ませていよう。地球の奥底で、大切な何かが静かに降り積もる音に――。
不愛想で手際が悪い。コンビニのベトナム人店員グエンが、就活連敗中の理系大学生、堀川に見せた真の姿とは(「八月の銀の雪」)。会社を辞め、一人旅をしていた辰朗は、凧を揚げる初老の男に出会う。その父親が太平洋戦争に従軍した気象技術者だったことを知り……(「十万年の西風」)。
科学の揺るぎない真実が、傷ついた心に希望の灯りをともす全5篇。
八月の銀の雪のあらすじと内容
こちらの書籍のタイトルは『八月の銀の雪』となってますが、5つの話で構成をされていて、ページ数の分量についても大きな違いはない作品となってます。5つの下地になっている共通点として考える事が出来るのは科学ですね。
収録をされているタイトルは以下となります。
- 八月の銀の雪
- 海へ還る日
- アルノーと檸檬
- 玻璃を拾う
- 十万年の西風
以下、それぞれの作品の簡単なあらすじ紹介と個人の感想となります。
八月の銀の雪
就職活動でパッとしない主人公と、その主人公とちょっとした面識がある、いわゆるコミュ力だけで生きてきた知人がコンビニでうっかりと遭遇。
その知人が仮想通貨ならまだしも、そこにマルチを組み合わせた形で近い段階で逮捕待ったなし。と言う感じの商売をしているのですが、就職活動での交通費などで出費が嵩んでいるせいもあり、ちょっと仕事を手伝う事になってしまった主人公。
そこにコンビニでアルバイトをしていたグエンさんも巻き込まれていくのですが、個人的には特別な驚きはなかったですかね。タイトルになっている、銀の雪と言う表現が素敵だね。と言う位でした。
最終的には逮捕待ったなしと思われていた知人も、ちょっと足を洗う様子が出てきていて、最後は少しだけ救われる感じで終わりとなります。
海へ還る日
母子家庭の母親が主人公。ひょんな事から電車で知り合った女性がきっかけとなり、博物館に行く事になり、そこからクジラとイルカの話へと展開をされていきます。場面としての動きはあまりない作品となっていて、母娘・クジラのおばちゃん。先生。後はちょびっとと言う登場人物のみとなります。
個人的には何もそんなに思いつめなくても良いのに。と思いますけれどね。母子家庭と言う事で気にしている人も多いのかな?でも、実際に見ていると母子家庭の方が寂しい思いを子供にさせたくない。と言う気持ちが強くで、子供と良く遊んであげていて良いな。と思いますけれどね。
全くの個人的な話としては都内の荒川区や文京区に住んでいた事があり、京成上野駅を何度も使っていたのですが、歩道に古雑誌を売っている人の描写がありました。まだ売ってるの?もう10年以上前になりますが、見た事があって、それはそれでそこの風物詩となっていましたが、もういないのかな?と勝手に思っていたのですが、まだ電車内で集めた雑誌を売っているんだ。と妙な関心をしましたね。今の京成上野の近況を知る事が出来て良かったです。
クジラ自体はほとんど出てきませんでしたが、『52ヘルツのくじらたち』が本屋大賞を受賞しましたね。すでに読んでいますので、興味がある方は以下をどうぞ。
アルノーと檸檬
主人公は不動産管理会社で働いている中年ミドル。業務として立ち退きをして貰う為におばちゃんの家に訪れるのですが、そこでは鳩がいて。と言う形から話が入ります。
この鳩を中心とした話が展開をされていき、主人公の心の心境。鳩に纏わる話が登場をしていきます。鳩が新聞社で飼われていた時代の話など、知らなかった興味深い話が掲載をされていて、個人的には色々と勉強になりました。
『海へ還る日』ではクジラの話が読みやすい形にて科学的な話が掲載をされていましたが、こちらでは鳩の帰巣本能について、科学的に紹介をされています。
その鳩の帰巣本能を持っている鳩が何故、帰る事が出来ないのか?それが終盤になっていき明らかになるお話でした。
ノミネートで本屋大賞では2位の作品で、舞台が『アルノーと檸檬』に出てくる主人公の出身地と同じと思われます。話の内容自体は全然違う物となりますが、島の風景なども、少し出てきていたので、こちらの『アルノーと檸檬』を読み始めて、あ!あの作品の舞台が地元なんかな?となりまして、風景なんかも、少し頭の中でイメージをしやすかったですね。BSになりますが、ドラマ化もされている作品です。
玻璃を拾う
まず、玻璃の読み方ですが、(はり)になりまして、これがガラスと言う意味になります。知らなかったですね。今作では5つの話が収録をされていますが、一番自分の中で、お!と思えた作品がこちらの作品でした。
主人公は女性で、ちょっと癖のある人にSNSで絡まれたのですが、友人の女性が原因だったり、その絡んできた人と知り合いだったりして、実際に対面をする事になり。と言う展開がされていきます。ちょっと最後のシーンで、フワッと両者が恋愛関係に発展をしそうな形になっているのが、自分の中で???となりましたが、テーマとなっている世界について、全く知りませんでしたので、勉強になりました。
あとがきに記載をされている情報を辿ってみると、ほぼ奥修さんの話でしたね。マツゲの下りなんか、奥修さんが実際にマツゲを使っている事を知りました。一つの書籍から、情報や知識を横に広げていく事も大事ですし、自分の中でも興味が沸きましたので、『珪藻美術館』については、是非とも読んでみたいですね。読み終わりましたら、下に掲載をしておきたいと思います。
取りあえず、書籍の中では言葉で表現をされていて、何となくのイメージは出来るのですが、具体的にこれ!と言う所まで至りませんでした。で、動画作品でありましたので、以下に紹介をしておきたいのですが、凄いですね。最初に見た時にはビックリしました。
モデルになっている書籍を読んでみました!より作品のイメージが分かりやすくなりましたし、作業の大変さが、より伝わりました。
十万年の西風
気象観測をしていた男性と原発関連施設で働いていた男性の二人が登場をしている話になります。凧揚げをしている様子から始まり、それぞれの仕事の事。社会の不条理としがらみについての話から、風船爆弾へと話が移動をしていきます。
風船爆弾と言えば、先の大戦で日本軍が実際に使った兵器として知っている人も多いと思います。私自身も存在は知っていたのですが、では、どこから風船爆弾が放たれたのか?と聞かれると、えーっと、、日本から。としか答えられませんでしたね。
『十万年の西風』の舞台そのものになっている場所になりますが、風船爆弾はこうした場所で放球をされていました。少し調べただけとなりますが、調べた限りでは、限りなく写真付きで丁寧に説明をしてくれいたのが、上に掲載をしている、黒しばわんこの戦跡ガイドさんのサイトになります。
作品を読む前、もしくは読み終わった後に見て頂ければビジュアルとして、作品をよりイメージしやすくなると思います。
トータルの感想
5つの話が収録をされていて、それぞれが違ったテーマを扱っていたので、飽きが来ないで読み終える事が出来ました。本屋大賞にノミネートをされている作家さんの作品としては、これまで女性の作品が多かったのですが、男性の作家さんは始めてでしたね。女性の作家さんになると、男性の私としては、うん?と思える主に恋愛部分で、??となる事が多かったのですが、男性作家さんの場合には、そうした比率が下がるのもあり、自分の中では戸惑う事が少なく読めました。
これまでに、知識として知っていた部分もありましたが、そこからもう少し掘り下げて疑問を感じて調べる習慣が自分の中では足りていないな。と改めて気がつく事が出来ましたし、知らなかった事も知る事が出来て、本当に少しですが、自分の知識の横幅を増やす事が出来ましたね。こうした書籍に巡りあう事が出来た事。作家さんである伊与原新さんに感謝!
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