もうひとつの昭和を描く超弩級歴史大作
――歴史に「IF」はない。しかし、戦争が終わったあのとき満州国皇帝・溥儀が日本に亡命していたら…。
作家・浅田次郎の「蒼穹の昴」の時間と空間を舞台に、清朝のラストエンペラー・愛新覚羅溥儀と溥傑兄弟の数奇な運命を余すことなく辿る完全版評伝。
関東軍により担がれて満州国初代皇帝となり、戦後はソ連に抑留後、戦犯として中国へ送還、中国共産党の熾烈な文革の嵐にさらされた溥儀。一方、日本人の妻を生涯愛し、終戦直後に生き別れとなるものの、のち奇跡の再会を果たした弟・溥傑。ふたりの人生は、日本と天皇家の「昭和」を裏側から照射する。
『昭和解体』『暴君』という大著で知られざる歴史のディテールを描く第一人者の牧久が、”もう一つの昭和史”に挑む。
長いけれど、読んでいて終わってほしくないと思えた名著
珠玉の一冊と言う陳腐な言葉で終わらせるには勿体ない。今回の紹介となると『転生: 満州国皇帝・愛新覚羅家と天皇家の昭和』については、自分の文章力では到底表現をする事が出来ない作品となっていました。作品の内容としては、タイトルからも推測が可能かと思いますが、ラストエンペラーとなる、愛新覚羅溥儀と愛新覚羅溥傑の話を軸としているのですが、主人公として主に据えられているのは、愛新覚羅溥傑になります。
何だか勝手に私自身が勘違いをしていたのですが、愛新覚羅溥傑さんは、日本に住んでいた訳ではなかったのですね。と言うのも、私自身が学生時代に、教授の奢りで学生では到底入る事が出来ない高めの中華料理屋さんでご馳走になった事があります。その時に即売会も兼ねてなのか?絵が飾ってありまして、ついでに音楽なんかも流れていて、そのお店の女将さんから、これ、誰が描いている絵だと思いますか?と言われて、いや、、知らないですが、、と答えに窮していると、女将さんがアーティスト本人を紹介してくれました。その方が差し出した名刺にあった苗字が愛新覚羅でして、え?愛新覚羅って、、、あの愛新覚羅ですか?となりまして、溥傑の血筋です。と言う話を聞きましたので、勝手に溥傑さんは日本に在住していたと思い込んでいたのですが、本書を読み、どうして愛新覚羅一族が日本にいるのか?氷解をしました。私自身が一度だけお会いした、愛新覚羅さんの妹さんになるのでしょうかね?眼医者をやっている方もいますよね。
本と言うのも縁から始まるものと実感
知人などに、こうした本を読んだ。と言う話をするのは、実に黙っているよりも言い事になります。最初に余談を書いてしまうと、競馬大好き!と言う決して世間一般では、好印象を与えない話もしていたら、ヒシアケボノのスワンステークスの優勝レイを縁があり、貰えたりした訳です。
今回、本書に辿り着いたのは、宇佐美まこと先生の『羊は安らかに草を食み』を本当にカバーのみで選んで読んでみたのが、スタートラインかな?と思います。詳しくは下に感想文をおいておきますので、読んで頂ければと思いますが、満州からの引き揚げ者の苦難が描かれている話となります。小説と言う体を取っていますが、苦難の道のりの大半は、ノンフィクションに依拠をしている作品になると思います。
こうした話を知人に伝えた所、今度はその知人から紹介をされたのが、小川哲さんの『地図と拳』となります。直木賞を受賞した事で、知名度としては高い書籍になるかと思いますが、テーマの舞台が満洲国となっていて、本当に世の中の人、興味があったり、理解をする事が出来るのだろうか?もちろん、小説としての出来栄えも素晴らしい作品となりますので、満洲国を知らなくても、もう極端な話、満洲国がフィクションとして捉えて読んで頂いても楽しめる作品にはなっているとは思いますが、満洲国の事をある程度以上の事前知識があれば、より楽しめる作品となっています。
で、今回のページで紹介をしている『転生: 満州国皇帝・愛新覚羅家と天皇家の昭和』を読んで思ったりしたのですが、『地図と拳』よりも先にこちらの作品を読んでおいた方が、より良かったな。と言う事ですね。『地図と拳』のモデルとなっている舞台が、色々と出てきたのですが、あまり間をおかずに、立て続けに読んだせいもあると思います。
と言う事で、ひょんなことから、元々満洲国については興味があり、何冊か読んだ記憶もありますし、関連書籍も購入をしておいて、そのまま。と言う状態となりますが、一気に火が付いた形となりますし、この構成も自分の中では、非常に良かったと思います。当然ながら、満洲国に関する書籍については、唸るほど出版をされているのですが、以下ですが、ざっくりと分けると視点として分かれています。
『羊は安らかに草を食み』→一般の人間の満洲国からの引き揚げの苦難
『地図と拳』→満鉄社員や軍属からの視点
『転生: 満州国皇帝・愛新覚羅家と天皇家の昭和』→満洲国、皇帝やその弟からの視点
立場が違えば、当然ながら視点も変わってくる訳ですし、苦難の種類も変わってきます。一般人の場合には、日本の本土に辿り着けずに事が切れてしまい、亡くなってしまう方も多いですし、そうした状況であれば、どれだけ悲惨な状況下に置かれていたのか分かると思います。軍属関係の場合には、一番、引き上げとしては楽なコースですね。もちろん、階級によっては、戦犯として逮捕をされたりするケースもありますが、日本本土への帰国は、そこまでの苦難ではありませんでした。
そして、愛新覚羅一族の場合には?専用の鉄道、そいて飛行場も用意をされています。愛新覚羅一族の場合には、本土への帰還ではなく、亡命と言う形になるのですが、史実を知っている人であれば、うん?となりますが、もちろん、それは実現をしませんでした。本書の中では、それが何故?実現をしなかったのか?断定はされていないのですが、やはり、あの男の名前が登場をしていますね。おのれ!瀬島龍三め!
今度、また物凄く久しぶりに映画の『ラストエンペラー』を見直してみたい気持ちになったのですが、記憶の限りでは、収容所でのシーンで終わっていると思いますが、どうだったんでしょう?本書としては、弟の愛新覚羅溥傑さんが亡くなる所までが収録をされていますが、内容としては、愛新覚羅溥傑とその妻である、浩さんの夫婦愛の話が底の下地となっています。政略結婚と言われても、お互いにお互いの事を思いあっていた。そして、本来は離れる事はなかった予定だったのに、売り飛ばされたせいで、離れる離れとなってしまった経緯など、知らない事だらけとなっていました。
ただただ、読めて感謝となりますが、最後に一言。アマゾンのレビューで、これだけの名著に低い評価を付けている方がいたので、どういった理由からだろうか?と思ってチェックをしたのですが、何も書かれていないで、星の評価だけした感じでしたね。恐らくですが、読むだけの理解力か胆力がなかったのでしょう。ギリギリの中間に付けている方は、何が言いたいのか分からなかった?と書かれていますが、序文とあとがきに著者が思い切り、愛新覚羅溥傑とその妻の夫婦の事を書きたかった。と書いてあるし、本書の中でも、後半にはその部分が大きく割かれているのですが、どうして理解出来なかった?多いに疑問であります。私自身はアマゾンのレビューに付けるのは、とっくに辞めているのですが、付けるとしたら、文句なしの5になりますね。
中国東北地方におけるダークツーリズム:「満洲」をテーマとする学生映像制作の可能性(PDF:敬和学園大学人文社会科学研究所年報 No.20)
参考画像

清朝最後の皇帝「宣統帝」、満州国初代皇帝「康徳帝」、中国共産党の思想改造教育を受けた後は北京市民として三つの人生を生きた愛新覚羅溥儀、弟の溥傑とその妻となった嵯峨侯爵家の娘・浩にとって満州国とはなんだったのか? テロと戦争の昭和が産み落としたこの国の物語は、300万人の命を呑み込こんだ後も続いていた―
テロと戦争の時代、‶王家崩壊の物語〟

ソ連軍の満州侵攻、そして日本の降伏を受けて、溥儀・溥傑兄弟らが帝都・新京から逃れたのは、長白山系の稜線が迫る愛新覚羅家発祥の地だった。溥儀は満州国皇帝を退位し、一行は日本への亡命を目指したが、ソ連軍に捕まりハバロフスクに抑留され、「東京裁判」にソ連側証人として出廷する。あのときもし、京都への亡命が成功していたら……。

満州事変を仕掛けた石原莞爾、「新幹線の父」十河信二、張作霖爆殺事件の実行犯・東宮鐵男、「中国通の外交官」吉田茂、盧溝橋事件の口火を切った東條英機……さまざまな人物が交錯した「満州国」。この国の歴史を遡行するのではなく時間軸に沿って、資料や証言を検証して見えてきたものとは?

〈ロシアがウクライナ東部のドンバス地方の二つの「人民共和国」を承認し、武力でそれを拡張していく過程は、かつて日本が満州事変から満州国の建国、日中戦争へと突き進んでいった歴史を思わせる。二十一世紀になってもまた過去の歴史が繰り返されるのだろうか? (中略)人類が再び過去と同じような悲惨な結末を繰り返さないことを祈りたい〉(「あとがき」より)

写真提供/関西学院大学博物館
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