この世に強権的な指導者が現れるたび、常に引き合いに出される「稀代の独裁者・ヒトラー」。大衆を熱狂させたのは、その類まれな「演説力」。飛行機でドイツ全土を飛び回り、ラジオ放送を牛耳って全国の家庭を演説会場に変え、国民の心を掴み、破滅的な戦争へと突き進んでいった。そんなヒトラーの時代を体験した人びとの多くが鬼籍に入り、生の証言を聴ける機会も残り少ない。ヒトラーの演説を聞き熱烈に支持した人、ナチスに肉親を奪われた人、反発を覚えながらも抗えなかった人……。本書では、当時、様々な立ち位置にいた人びとをドイツ各地に訪ねて得た貴重な証言に加え、そうした街に埋められていた金色のブロック、ヒトラーにより命を落としたユダヤ人の名前が刻まれた「つまずき石」に注目。75年の時を超え、ヒトラーの時代を「追体験」していく。
NHK BS1スペシャルで話題を呼んだ番組『独裁者ヒトラー 演説の魔力』をベースとした待望の書籍化。
第1章 言葉の魔力
ヒトラーを一目見てみたい
ミュンヘン一揆
なぜ私はナチスになったのか
単に一五人目の首相
第2章 無謬の指導者1
「つまずき石」のない街
ドイツ中の家庭を演説会場に
ヒトラーに心酔する人びと
ヒトラー・ユーゲントとドイツ女子同盟
ナチズムが生んだ“エリート”たち
第3章 「平和」の名のもとに
だって彼はユダヤ人だから
それぞれの「水晶の夜」
パパが連行されなければいいけど
「大ドイツ」の一部になる
我らが総統ならやってくれる
特別コラム 誘導する言葉を聞き分けよ
高田博行(言語学者・学習院大学教授)
第4章 言葉の呪縛
ドイツ人は支配民族である
口を手で隠して生きる
総力戦演説
「おのれの責任を自覚せよ」白バラ抵抗
運動総統が命じ、我々は従う私は生きている。
ただ、私は生きている
最終章 呪縛、それから
「良いナチス」と「悪いナチス」
ヒトラーからの「解放」
「負の歴史」とともに生きる
ヒトラー政権下を生きた人達の話
第一次世界大戦で没落をしたドイツ。その苦渋を舐めてきた国民に対して、屈辱を払拭してくれると思わせた人物。それがヒトラーになるのですが、今作ではヒトラーの演説。そして当時生きていた人達へのロングインタビューの書籍となっています。ヒトラーの演説の中で使われてきた単語がどう変化をしていったのか?そうした点が非常に興味深かったですね。
まず、少数政党であったナチスは、ユダヤ人に対して非常に攻撃的な内容の演説をヒトラー自身もしていたのですが、実際に政権が狙えるだけの議席数の確保が見えてくると、ユダヤ人への攻撃は演説の中には盛り込まれなくなりました。流石に政権を取るかもしれない。と思われている政党が特定の人種に対して攻撃的な演説をする訳にはいかなったのでしょう。ただし、この時点ではユダヤ人と言うのは存在をしておらず、ユダヤ教徒の事を指しており、ユダヤ人が厳密に定義をされるようになったのは、ヒトラーが政権を取ってからとなります。少数政党時代には、ユダヤ人への苛烈な攻撃的な演説を行ってきたのですが、政党の規模が大きなるに連れ、ユダヤ人への攻撃を演説の中で封じる。これによって一般市民も流石にユダヤ人への攻撃をする政党を大衆は支持をする事が出来ない。となるのですが、どうやらナチスは改心をしたのだろう?と勘違いをさせたのでしょうね。歴史が証明をするように、ナチスは多くの人が到底支持をする事が出来ない、少数政党の時代から、本質的には何も変わっていなかった。これを多くの人が見破る事が出来なかった。
ヒトラーの経済政策
何となく、経済を再生させた。と言う話は知っていたのですが、具体的な政策として大企業と富裕層への課税強化。そしてなるべく現場の労働者へ賃金として転換をするように、中抜きの禁止した。と言う事が書かれていました。課税をした分については公共事業に回していて失業者への雇用としたんですね。これは凄いですよね。
現在の日本では、まず無理であろう政策を実行に移していき、庶民から絶対的なヒーローとなったヒトラー。これ位でしておけばドイツの首相として英雄で終える事が出来たであろうに、何故、突っ走る事になったのか?
それは経済政策で支持を集めてしまったからみたいですね。勿論、ユダヤ人への迫害が開始をされたり、共産党員への弾圧は経済や戦争とは関係のない部分から開始をされています。そして戦況の悪化とともに苛烈さを増していくのですが、経済回復で絶対的に支持を集めたヒトラーが、経済政策で雁字搦めになってしまい、当初はアウトバーンを代表する公共事業だったのですが、国債を発行しまくり、それを軍事費に充て始めた事から、もう後戻り出来ない状態へとなったみたいです。
勿論、アウトバーン自体も戦争を見越しての公共事業ではあったのですが、経済の活発化と言う側面も期待をする事が出来るので、次の経済を産む可能性がある公共事業であるのに対して、戦車や戦闘機への公共事業は、雇用と作る時に経済を産む事があっても、完成してしまえば、後は何も生み出さないですからね。
本書の中では書かれていなかったのですが、当時のドイツの経済学者は、ヒトラーの経済政策での、膨れ上がる軍事費については、どう考えていたのでしょうか?そこが書いてあれば、もっと充実をした作品になったと思います。
プロパガンダに取り憑かれて
本書で登場をしている人達は様々です。親しかったユダヤ人が連行をされていき、恐怖から口を閉ざしていく人。血の繋がりがなかった義理の父親がユダヤ人であり、強制収容所に連れていかれても、ヒトラー総統が知っていれば、こんな事にはならなかったはずだ。とそれでもヒトラーを信じ続けた人。総括をしても、ポーランドへの侵攻までのヒトラーに間違いはなかった。と信じている人。戦争が終わり、ナチスがしてきた事はこんな事だぞ!と捕虜収容所で見させられても、それを到底受け入れる事が出来なかったけれど、収容所から出て、自分自身で学び直していく過程で、誤りであった事を自分自身で見つけいく人。そもそも、ヒトラーの経済政策のお陰で利益を得ていた事から、政治的な事は抜きにして、儲けさせて貰ってますから支持します。とシンプルな人もいましたね。
ただ、総合的に見てみると、ドイツの首都に住んでいた人達は、ユダヤ人に対しては、どうも連行をされて殺されているらしい。と言う事は把握をしていても、ガス室云々。と言う事は知らなかったみたいです。当初はユダヤ人も含めて、反ナチスの人であったり、共産党員などについても、収容所に連れていかれる事はあっても、大体は一ヶ月かそこらで帰ってきていたみたいです。なので、関係ない人から見たら、別に大した事はないんだろう。と思っていたのですが、段々と苛烈さを増していく、いわゆる、ゆで蛙状態で、気がついたら自分たちが支持していた政府がとんでもない事をしている。と言う事に気がついても、犯行をする事が出来なくなっていたのではないでしょうか?要するに完全に慣らされた状態ですね。
日本でもあるプロパガンダ
日本でもあるプロパガンダは行われていますよね。DappiなるTwitterのアカウントがついに特定をされて、それが法人であった。と言う事が、現時点ではばれました。裁判は12月からの開始となりますが、自民党と言う最大政党となっている状態になりますので、流石に自分たちからデマを拡散させる事はリスクがあるので、匿名を装い自民党に対する野党のデマを拡散させるプロパガンダを行ってきて、法人の社長は自民党の事務方の一番偉い人と親戚関係。今後の裁判の行方をみたいのですが、一部の新聞記事での取材によると、デマを拡散させた法人の弁護士が、使われた回線はうちだけれでも、投稿をしたのは自分たちではない。と言う旨の発言をしているみたいなので、色々と気になる所ですね。
この辺りのDappiのアカウントを信じていて人は、訴訟を起こした野党議員に対して、言論の弾圧などと言う意味不明な事を発言しているケースが多く、また、デマである事を論理的に指摘をしている人がいたとしても、到底受け入れる事が出来ない。と言う様子で、相変わらず野党を敵視しているみたいです。
この辺り、ドイツの場合にはプロパガンダを普及させる為に、ラジオを政府として後押しをして安価なラジオの販売普及をさせて、プロパガンダをまき散らした経緯が本書の中で書かれているのですが、現代社会である程度の規模の社会で生活をしている人であれば、必ず何人かはTwitterをやっているでしょうし、そうしたプロパガンダに刷り込まれている人がいるのは間違いありませんので、自分はTwitterをやっていないから無関係である。とかは関係のない話になります。確実に関係のある話なんですよね。
その他にも野党に対してデマを拡散させていた、ホラ吹き小僧も裁判が進んでいる状態となりますが、こちらに関しても、デタラメな情報が錯綜をしており、そのデタラメな情報を元に、野党議員を叩いている人が大勢いますね。
一度プロパガンダが刷り込まれてしまうと、そこから抜け出す事は極めて困難である事は、現代社会においても明らかとなります。
安倍政権下において、庶民の生活は楽になったか?各種重要指標を見る限り、むしろ沈没の一途となっているのですが、これが個人的には不思議でしたね。ヒトラーは目的は戦争遂行であっても、過程において経済政策で失業者を減らし賃金を増やし、ドイツ国民の生活を豊にした。
だから盲目的に崇拝する人が現れるのも理解は出来るのですが、北方領土問題もロシアに譲渡をする形で終わり、北朝鮮の拉致被害者も一ミリの進展も無し。正規雇用で増えたのは人口問題が関連をしている介護職が大半で、そこが大幅に増加をしただけで、他の産業の正規雇用は減少をし、実質賃金も減少。
何よりも、公文書の偽造、実質賃金が大幅に上昇をした!と言う話も捏造。全てがばれているにも関わらず、個人崇拝をしている人が未だに多いのが、どうしても私自身には理解をする事が出来ません。
総力戦演説や他の動画
201ページ目から始まる、総力戦演説の動画になります。次のページに舞台となっている写真が掲載をされているのですが、当たり前ですが同じですね。こちらはヒトラーではなく、ゲッペルスになります。戦況の悪化につれて、ヒトラー自身は演説をしなくなっていきます。コロナが発生をしたり、都合が悪くなると、表に出てこなくなる、誰かさんに似ていますね。
本書224ページにある、ヒトラー暗殺計画の映画がこちらになります。私自身も見た事がありますが、あと少しだったんですけれどね。失敗となります。
心に留めておきたい文章を引用しておきます
現在でもその政党が何を望んでいるのか熟慮することなく、闇雲に従う人びとがたくさんいます。そういう人は。みずから思索し、物事を多様な側面から見ることの大切さを、どうやら歴史から学んでいないようです。良くありませんね。
他にもグサッと刺さる文章がありました。本書を読んで頂ければ分かるのですが、戦後、学び続けた方の言葉になります。重みがありますね。
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