内容(「BOOK」データベースより)
現代の日本で、暴動を目撃する機会はまずないだろう。では、かつてはどうだったのか。本書は、新政反対一揆、秩父事件、日比谷焼き打ち事件、関東大震災時の朝鮮人虐殺という四つの出来事を軸として、日本近代の一面を描く。権力の横暴に対する必死の抵抗か、それとも鬱屈を他者へぶつけた暴挙なのか。単純には捉えられない民衆暴力を通し、近代化以降の日本の軌跡とともに国家の検力や統治のあり方を照らし出す。
著者について
藤野裕子
1976年生まれ.東京女子大学現代教養学部准教授.早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学.博士(文学). 著書『都市と暴動の民衆史』(有志舎,2015年,第42回藤田賞受賞) 共著『震災・核災害の時代と歴史学』(青木書店,2012年),『歴史学のアクチュアリティ』(東京大学出版会,2013年),『第4次現代歴史学の成果と課題(第1巻)』(績文堂出版、2017年),『公正から問う近代日本史』(吉田書店,2019年)など 共編『牧原憲夫著作選集(上・下)』(有志舎,2019年)
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
藤野/裕子
1976年生まれ。東京女子大学現代教養学部准教授。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(文学)。著書『都市と暴動の民衆史』(有志舎、2015年、第42回藤田賞受賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
変遷していく民衆暴力
生活困窮の為に、勝ち目がない。と分かっていながらも動かざるを得ない状況にまで進んでしまった秩父事件から、本格的な近代暴力として扱っている内容です。その前段階として農民一揆についても書かれているので、農民一揆と秩父事件の違いについても理解をしやすいと思います。
その後には日比谷焼き打ち事件が取りあげられているのですが、時代背景についても丁寧な説明がなされているので、非常に納得感があります。
そして半分程度のページが費やされているのが、関東大震災における朝鮮人虐殺になります。
どれも出来事として知っている事件になるのと、秩父事件については専門の書籍に目を通しているので、何となしに把握をしていたのですが、日比谷焼き打ち事件については、その規模に驚かされましたね。結構大きめの規模で死者も出した。国民を守るべき軍が国民に銃口を向けたから、とんでもねー事件として記憶をされた。と言う程度の認識だったのですが、結構な数の警察署が破壊をされているのですね。
背景など、どう言った経緯で広がっていったのか?知りたい方は本書を手にしとって、自分で確認をして下さい。
関東大震災における朝鮮人虐殺
事件としては知っていましたが、背景が凄いですね。昔の話と言えばそれまでで、現実問題、どうしても時系列と言うのが有耶無耶に学者などでない限りなってしまうのですが、本書を読んでふに落ちましたね。
世代的にも、関東大震災の時に、色々と流言飛語が出て、朝鮮人(当時の呼称)が言われなき殺害をされた。と言う話は知っていたのですが、最近では何?朝鮮人虐殺がなかった。と言う事を言い出すアホが増えてきてるのでしょうかね?それに対して証言だけだ。とか言っているアホも多くなっているみたいなのですが、当時の新聞なんて証言を集めたのも多い訳ですし、何のメリットもない。むしろ加害者側の人の証言もありますし、照らし合わせる事で、これは間違いない証言でしょうね。と言う事位があるのは理解して貰いたいですね。
たまたま埼玉県に住んでいるので、本庄での虐殺などについては、警察署を襲撃までしていて、止めようとしていた巡査などの証言もあります。電車で移送をされてくるシーンから証言があり、それぞれの証言は別の方になるかと思いますが、完全に一本筋が通っている内容となっていました。証言を裏付ける資料。と言う方も多いと思いますが、この朝鮮人虐殺については国家としての資料が少ないのも、納得できました。
これについては、知らない人も多いと思いますが、軍隊もやっているんですね。勿論、軍や国家としての公式資料にはないと思います。その理由として、本庄だけでも80人程度の朝鮮人虐殺が起きているのですが、半分は日本人と言う事にしろ。と言う通達がきていて、実際に報告をされているのは半分程度なんですよね。殺害をした遺体は燃やしてるの。
要するに国家ぐるみ。と言いましても、本当に頂点にいる内閣総理大臣レベルの人が、どこまで把握をしていたのか不明になるのですが、もみ消しを始めた理由が諸外国から良く思われないから。と言うのが、何とも日本人らしいですね。
コロナで自粛警察とかを見ても分かりますが、国家が方向性をそれとなく示せば、その方向性に頼まれてもいないのに猪突猛進で進む日本人って、今でも一定数いますよね?それと同じで、朝鮮人虐殺についても火種自体は国家が巻いていたんですね。不逞鮮人と言う単語が出始めたのも、関東大震災の少し前で、どうしてこう言う単語が出てきたのか?本書で読んでね。と言う話なのですが、メディアも一体となり、朝鮮人に対して、あまり良いイメージを持たれないように仕向けていた所、こうした関東大震災で一種のパニック状態となり、虐殺が起こってしまった。
個人的には別段、絶対的に暴力反対とは思わないですし、現に秩父事件については、起こした方に肩を持ちたい気持ちになります。官製相場でのデフレに対して不況のどん底に叩き落とされて、公的な事がしてくれた事は、近所でお手伝いをしてもらっても、お酒を振る舞ったりお餅を出したりするのは辞めて節約しましょう。とかだったら、そりゃキレるよ。そう言う次元じゃねーんだよ!と言う話ですからね。
私自身も個人的には証言至上主義に陥らないようにしているのですが、繋ぎ合わせて合点がいけば、それなりに信憑性があるものかと思います。そもそも、公的な機関が隠蔽をしようとした事件になるので、堂々と遺体を燃やして少なく見せろ。と通達をしました。と言う書類なんて残す訳がないんですよ。
関東大震災の朝鮮人虐殺から、もう何年も経過をしていますが、今だってそうですよね?桜を見る会の名簿を出して下さい。と野党に言われたのですが、たまたまその日、請求をされてから捨てちゃいました。とか言うのが政府になりますので、国民もそれを許してしまう訳です。
関東大震災における朝鮮人虐殺については、これまでは、そこまでの数じゃねーだろ。位の気持ちでした。一定数のすげーアホが訳の分からない嘘を信じて、自警団宜しく!みたいな感じで勝手に人を殺してしまった。と思っていたのですが、数としてそこまで大きくなれないのは、周りの人間が止めるだろう。と思っていたのですが、昨今の風潮を見ていると、止めないですね。大多数の人は、あれ?と思いながらも止めないでしょう。積極果敢に政府に取って都合の良い方向に動く人の数の方が、おかしいな?と思って動く人よりも、圧倒的に多いのが現実。と言う事を知りました。
そうしたタイミングで、朝鮮人虐殺の経緯を背景から書いてくれていたので、自分の中では納得出来ましたね。
構図として、あくまでも何となくなのですが、インドネシアで起きた虐殺と似ていますね。なんとなくですけれどね。
インドネシア大虐殺-二つのクーデターと史上最大級の惨劇(お薦め度強度!)
民衆暴力―一揆・暴動・虐殺の日本近代(良書!お勧め!)
良い記事ありました
上の記事ですが、これまでにも朝鮮人虐殺について扱っている記事を書いている方みたいで、中々読み応えのある記事となっていますので、是非とも読んでみて下さい。『9月、東京の路上で』と言う作品についても、こちらの記事で存在を知りました。機会を作って読んでみたいですね。
民衆暴力―一揆・暴動・虐殺の日本近代を読んでみよう♪
- 民衆暴力―一揆・暴動・虐殺の日本近代(アマゾン)
- 民衆暴力―一揆・暴動・虐殺の日本近代(楽天ブックス)
- 民衆暴力―一揆・暴動・虐殺の日本近代(DMM.com電子書籍)
- 民衆暴力―一揆・暴動・虐殺の日本近代(ebookjapan)
- 藤野裕子(ebookjapan)
コメントを残す