1970~80年代、資源を求めた日本がアフリカ大陸に残したものは、
巨大な開発計画の失敗とさび付いた採掘工場群。
そして、コンゴ人女性との間に生まれた子どもたちだった──。
経済成長期の闇に迫る、衝撃のルポルタージュ。
【目次】
序章 不可解なルポルタージュ
第一章 真実への距離
第二章 ジャパニーズ・ネームの秘密
第三章 日本人が遺したもの
第四章 BBCの「誤報」
第五章 修道院の光
第六章 空と銃声
第七章 祖国への旅
第八章 富と紛争
第九章 未来への賭け
第一〇章 医師たちの証言
第一一章 闇の奥へ
第一二章 伴走者への手紙
第一三章 正しく生きるということ
あとがき 悲しき宿命の残影
【著者プロフィール】
三浦英之(みうら・ひでゆき)
一九七四年、神奈川県生まれ。朝日新聞記者、ルポライター。『五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後』で第一三回開高健ノンフィクション賞、『日報隠蔽 南スーダンで自衛隊は何を見たのか』(布施祐仁氏との共著)で第一八回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞、『牙 アフリカゾウの「密猟組織」を追って』で第二五回小学館ノンフィクション大賞、『南三陸日記』で第二五回平和・協同ジャーナリスト基金賞奨励賞、『帰れない村 福島県浪江町「DASH村」の10年』で2021LINEジャーナリズム賞を受賞。その他、第八回城山三郎賞候補作に『白い土地 ルポ 福島「帰還困難区域」とその周辺』、第五三回大宅壮一ノンフィクション賞候補作に『災害特派員』がある。現在、岩手県盛岡市在住。
海外の誤報を、結果的にただした名著
著者である三浦英之さんの本、ほぼ全て読んでいると思いますが、実際に取材を重ねて作成をされた書籍も多くなっている為、時代が前後をしているケースもあります。例えば本書の取材の最中に、『日報隠蔽 南スーダンで自衛隊は何を見たのか』などの取材の事も書かれています。当然ながら書籍の中心はそこではないのですが、本書のきっかけとなったのが、一つのTwitterからとなっているのが驚きでした。
まず、1970~80年代に現在のENEOSが炭鉱の工事として派遣をされていた日本人達が、現地であるコンゴ人の女性と結婚をして、子供を作った。ここまでであれば、世界中にある話になるかと思いますが、それを日本人の医師や看護師さんが意図的に嬰児を殺害していた。フランスとBBCで、そう報道をされたのですが、結論を先に書いてしまうと、BBCは色々と苦しい言い訳をしながらも、配信をした記事を削除しました。それを本書で登場をしている田邉さん、個人が動かしたのですが、凄い話だと思います。
著者である三浦英之さんは朝日新聞で働いている関係からも、統一教会政権を支持していた自称保守や普通の日本人には、何一つ出来ない、日本の事実確認が取れていない国家としての恥じをそそいでくれた訳ですね。素晴らしい快挙だと思いますし、読んでいて、そんな事があった事すら知りませんでしたが、流石!三浦さん!と思いました。三浦さんとは当然ながら面識はありませんが、出版をされている書籍を読めば、誠実に取材を重ねているのが伝わってきますので、取材をした人や協力をしてくれる方を動かしていく力を持っているのだと思います。
読んで思ったのは、それぞれの個人の生き方ですよね。現地でコンゴ人女性と結婚をして子供をもうけた。そして、一過性としては大きな金額とは言え、以降、母子家庭となる事を考えると、とてもではないけれど足りない金額だけを渡されて帰っていった日本人。今では日本で普通に家庭を持っていて、あるいは当時から家庭を持っていた方もいるでしょう。要するに今更ほじくり返されても、都合が悪い。だから隠蔽したい。なかった事にしたい。と言う態度で、取材拒否。会社としても、あまり掘り下げていきたい問題ではないので、どこまで誠実に対応をしているのか?大いに疑問です。
現在のENEOSとしては、当時の社員に対して聞き取り調査をしたが、しっかりと確認を取れなかった。とやる気のない対応。現在では会社として、人道的に何ができるか?を検討している。とありましたが、その後の話は一切ありません。ホームページを見ても、この問題については、一切書かれていません。都合の良い情報ばかりをホームページに並べている、クソ企業と認定をさせて頂きます。
本書の中で登場をしている、当時を知る日本人の中に、あまりにも卑怯で人間性を疑わざるをえない方も何人か登場をしています。文章を読むだけで、ヘラヘラしながら、俺は関係ないし、調べた。と言っていますが、どうせまともに調べてもいないでしょう。噓ばかりを平気でつける。家庭を持っているのであれば、平気で噓をついてヘラヘラした人間になれ。と教えてこい。
もちろん、立場と言うものがありますが、登場をしている中には、大使館の人間も登場をしています。役人ですから、役人としての仕事を全うしているのですが、幸いな事に、まともな感情を持っていて、職員としてではなく、人間としての信条の吐露してくれています。そうした気持ちを持ってくれているだけでも、読んでいて救われた気持ちになりましたね。
当事者の日本人男性の中でも千差万別ではあります。中には一度、本当にコンゴにまできて、子供に会った男性もいます。すでに亡くなっている方もいますが、年齢的にもそうでしょうね。自分のした事の無責任な償いを頬かむりをしたまま死んでいく。果たしてそれで良いのだろうか?それぞれが今の家庭を壊すきっかけになりかねない問題でありますので、都合が悪く隠しておきたい。と言う気持ちはあります。しかしながら、自分の子供が父親がいないせいで、まともな教育も受ける事が出来ず、混血児として、馬鹿にされ育ち、今も貧困から抜け出せない中で、ぬくぬくと天寿を全うして、残された家族に天国に行った。とか思われたいのでしょうかね?
天国や地獄と言う宗教的な概念については、個人的には何にも考えはありません。しかし、ろくな人間じゃねーやつが死んだ。位の事だけは分かりますね。今だけ・金だけ・自分だけ。の世の中ですからね。
とりあえず、個人的にはENEOSは使わねーぞ!と言う気持ちになりましたが、如何せん巨大企業であります。どこかしらでENEOSの客になってしまっているかもしれせんので、注意をしないといけないですね。三浦英之さんには、今後も知らなかったけれど、知って良かったと思える書籍を楽しみにさせて頂きます。
なお、今回の記事を書くに辺り、三浦英之さんのTwitterを拝見させて頂きましたが、安倍晋三が銃殺をされた事に対して、失望?と言えば良いのでしょうか?暴力によって。と言う事が書かれていたのですが、私自身の考えは少し違います。無差別に何の権限もない人を巻き込むような人を、自殺の為に巻き込むようなテロは容認出来ませんが、メディアも含めて、首を垂れて、犯罪者の首謀者が情報を隠蔽し続ける限りは暴力によってしか解決手段はないのではないか?と考えています。
結果はご存知の通り、オリンピックの賄賂の首謀者も、こいつだろ?と思える発言も高橋理事からの証言も出ており、悲しいかな、三浦英之さんや一部のジャーナリストは戦い続けましたが、ジャーナリストが、権力に跪いて足を舐めた結果、こうした事態に陥った。因果応報であると思います。事実、三浦英之さんは、安倍晋三と統一教会の関係がどこまで深いものであると知識として知っていたのか分かりませんが、以降はTwitterでは沈黙が続いていますね。
テロ行為に愕然としているのか?ジャーナリストが敗北をしていたから、こうなった事にショックを受けているのか?私自身には分かりませんが、何事もやりすぎ、情報の隠蔽・改ざん。当たり前の話ですが、良くないですからね。
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