五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後(読んだ方が良い)

五色の虹(読んだ方が良い)

五色の虹(読んだ方が良い)

内容紹介
旧満州に設立された満州建国大学。「五族協和」を掲げ、五つの民族の若者達がともに青春を過ごした。満州国崩壊後、卒業生はどのような戦後を送ったのか。その実態に迫るドキュメント。(解説/梯久美子)

内容(「BOOK」データベースより)
日中戦争の最中、満州国に設置された最高学府・建国大学。「五族協和」を実践すべく、日本、朝鮮、中国、モンゴル、ロシアから集められた若者たちは6年間、寝食を共にしながら国家運営の基礎を学んだ。そして敗戦。祖国へと散った彼らは帝国主義の協力者として弾圧を受けながらも、国境を越えて友情を育み続けた。スーパーエリートたちの知られざる戦後。第13回開高健ノンフィクション賞受賞作。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
三浦/英之
1974年、神奈川県生まれ。京都大学大学院卒業後、朝日新聞社に入社。東京社会部、南三陸駐在、アフリカ特派員などを経て、現在は福島総局員。2015年、『五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後』で第13回開高健ノンフィクション賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

とんでもなく良い作品だった

あまりにも国家としての歴史が短過ぎて、歴史には興味がある。と言う人の多くがスルーをしてしまう。日本の傀儡国家だった。と言う事実であったり、国家建設に向けたプロセスについても、歴史が好きな人であれば、何となくは知っているので、別に直視をしなくても良いかな?と、どこかで思ってしまい、それが華麗にスルーをしてしまう要因になっている可能性は否定出来ないですよね。ラストエンペラーで充分にお腹が一杯になってしまった。と言う感じです。

そんな満州国に次代を育てる為の大学があった。言われてみれば、凄く当たり前の話のようにも思えるのですが、短い国家の歴史の中、意外と頑張ったんだなー。と言う事も頭をよぎったのですが、大学の目的が満州国が掲げたスローガンである五族協和であり、学校を作った満州国であったり、日本の本当の狙いはともかく、その学校で全力疾走をした当時の学生にスポットライトを当てているのが、今作となる『五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後』になります。

まずは著作者の三浦さんの動画

と言う事で、本当は建国大学の塾歌を探したかったのですが、著作者である三浦さんが自分の書籍に関する説明をしている動画を代わりに見つける事が出来ましたので、そちらを紹介しておきたいと思います。

言論の自由を保障した大学

ICUと言う国際化を目指している大学があるのですが、そちらよりも国際化が進んでいたのではないか?と当の大学の先生が思っているレベルに自由な言論が保障をされていたのが建国大学になります。その精神は生き残っており、中国人の元学生が戦後になり、建国大学について批判的な内容の書籍を発行しようとした際にも、同期が金を出し合っていた。と言う話があります。金を払っている同期としては、多いに反論はあるけれども、言論の自由を守る事を第一にしている結果になります。

これは凄いですよね。自分が気に入らない。と思っても、金は出す。まずは言いたい事を言わせる。と言うこのスタンス。中々、人間としては出来ない事になると思います。

戦後の出版に関する話だけではなく、建国大学では夜になると、議論を毎日行い、大体殴り合いになるみたいですが、それでも翌日にはケロッとして、またお互いに議論をして殴り合う。これを繰り返したみたいです。議論では、負ける事は当然ありますし、違う民族同士での議論になりますので、自分達と見え方が違う事にも気がつかされる。そうした形で人間同士で磨きあっていく。これが建国大学の精神でもあります。

現代人である私としては、この環境に耐えられる自信がありません。台湾や韓国と言った、優秀な人間を集めていた国では、戦後、建国大学出身者が出世をしているケースもあるのですが、日本ではシベリア抑留にあってしまったのもあり、日本国内で政治家なりとして出世をした、建国大学出身者。と言う方は残念ながらいませんでした。ぬくぬくと逃げ回った人間が政治家として偉くなってしまったのが日本の戦後ですね。

教養とは何か

あまり本書のテーマ自体とは関係ないのですが、教養について書かれている箇所が、自分の胸に刺さりましたので、引用をして紹介をしておきたいと思います。

歌や詩や哲学と言うものは、実際の社会ではあまり役に立たないかもしれないが、人が人生に絶望をしそうになったとき、人を悲しみの淵から救いだし、目の前の道を示してくれる。難点はそれを身につけるのに時間がかかることだよ。

これは凄い良い文章でした。

昨今では文系大学、特に偏差値として低い大学については、風当たりが強くなっている傾向があり、大学で学んでも会社で働く上では役に立たない知識ばかりを与えている。と言う考え方が蔓延をしてきているのかな?と思いますが、大学と専門学校を勘違いしている輩が増えているのが残念ですね。

自分自身も、学生の頃は、本なんて読まないし、教養を身につけるべきタイミングに遊んでおりましたが、それは俺個人が失敗をした。そして失敗をしている人が大勢いる。と言うだけの話であって、では、俺みたいなアホが気がつけるようにするにはどうしたら良いか?と言う事を考えるべきでしょう。

中国での取材の危険性

中国では当局が監視をしていて自由な言論はない。と言う話は良く聞く話になるのですが、実際にどうなの?と言うのは、普通の人であれば分からないと思いますが、本書ではそうしたシーンが登場をしていました。

もっとゲリラ的に取材をしたりすれば、もっと違った形になるのですが、そうしたケースで発覚をしたら、もっと大変な事になる訳でして、本書の著者ではある三浦さんはフリーではなく、新聞記者になりますので、組織に迷惑をかけない為の正攻法な手段で段取りを行っていると思います。

これまで、中国関連で言えば、安田さんの書籍を読んでいますが、安田さんはフリーですからね。その為、取材方法についても、安田さんと三浦さんには段取りに大きな違いがあると思いますし、そもそも取材対象が、中国共産党から見て、マークをされているレベルにも違いがあると思います。

具体的に書いてしまうと、インタビューの際に中国共産党にとって、都合の悪いキーワードが出た時点で、取材は終了。となってしまいました。その時の緊迫感についても文字だけでも充分に伝わると思います。

スミノルフでちょっと泣いた

五族協和になりますが、内訳は日本・朝鮮・満州・漢人・ロシアになります。全く興味がない人の場合には、ここからかもしれませんが、本書の最後に登場をする、スミノルフはロシアになります。本書インタビューの時にはカザフスタン。と言う事で、遠いな。と言う気がするのですが、建国大学の同期の宮野さんが会いにカザフスタンまで行くのですが、中々の衝撃でした。スミノルフ爺さん、凄く良い人なんですね。

最後の最後に本当になってしまうのですが、通訳の女性を交えてのシーンで、ちょっと泣いてしまいました。これが建国大学での教育の成果となるのか?それは分からないのですが、人間性に凄く惹かれましたね。こうした行動と台詞が言える、そんな大人がもっと社会の上に立つべきだったと思いますが、満州国の大学に通っていた。と言うだけで、遠ざけられてしまったのが残念でならないですね。

勢いだけで書いていますので、全くまとまっていない文章になるのですが、二点だけ言える事があります。この書籍は読む価値が凄く高い。そして満州の事を始めから詳しい人なんて圧倒的な少数派だと思いますので、以下の書籍にも目を通しておく事で、より本書のイメージがし易くなると思います。

本当に自分は偶々で、前々から下で紹介をしている書籍については、いつか見てみよう。と思って、図書館の予約する予定リストに組み込んでいました。そんな事もすっかりと忘れていて、Twitterでたまたま三浦さんのを見て、今回の書籍を知り、図書館で探したらあったので、じゃあ、借りよう。と言う事で借りる予約を入れた時に、昔のリストを思い出して、じゃあついでに借りよう。と言う形で合わせて手に取りましたが、全体的ラッキーでしたね。

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