問題は英国ではない、EUなのだ 21世紀の新・国家論

エマニュエル・トッド

エマニュエル・トッド(引用:「最も愚かなのは、私たちフランス人だ!」)

商品の説明

メディア掲載レビューほか
アングロサクソンの世界に変化がはじまった

日本で自分の本がこんなに売れるなんて信じられませんが、その後の動きを見ると、英国EU離脱を評価し、これをネオリベラリズムとグローバリズムとの決別と見た私の見解は、基本的に間違っていませんでした。ところが変化のスピードは、私の予想をはるかに上回っています。

10月5日の保守党大会でのメイ英首相の演説は驚くべきものでした。「特権と権力のある人々によって労働者が無視されている」「過去の保守党は国家の市場介入を控えてきたが、政府として雇用を守り、適正に機能しない自由市場は修理するつもりだ」「そして保守党こそが『普通の労働者階級の人たちの党』になるべきだ」と。まるで左翼政党の主張です。私は本書で「イギリスでは、『右』のエリートの一部分が、エリート層に反発する民衆の指導者になり得る」という期待を表明しましたが、英国保守党の変貌は期待以上です。

歴史家として2016年をこう定義したい。「英米仏という民主主義の三大国において左派が右派でしかなくなった年である」と。英国の労働党、米国の民主党、仏国の社会党という左翼政党は、グローバリゼーション――ヒトとカネの移動の自由――から恩恵を受ける高学歴のエスタブリッシュメントの声を代弁し、これに反発する大衆を「ポピュリズム」として批判する。各国のリベラル派メディアもこれに追随しています。どの先進国でも高等教育の進展に伴う階層化によって社会が分断され、そこで「高学歴の左派」が「アンチ大衆」の態度を取っている。英国EU離脱とトランプ旋風は、グローバリズムとネオリベラリズムにこれ以上耐えられないという大衆の「民意」の現われです。

英米におけるこの“左右”転換は、グローバリズムとネオリベラリズムの終焉を意味します。英国では、右派であるはずの保守党が大衆の声を受け止め、見事に変貌している。私はトランプ礼賛者ではありませんが、グローバリズムとネオリベラリズムに固執する民主党のエスタブリッシュメントに反発するトランプの支持者は、トランプ本人以上にリーズナブルです。変化にすばやく柔軟に適応できるのが、アングロサクソン社会。またもや英米社会は、世界に先んじて変化を遂げようとしているのです。

これに対し、ドイツに支配された大陸ヨーロッパには死があるのみ。当初、遅れていたヨーロッパは、経済的グローバリゼーションの上に、諸国家の政治的廃止というイデオロギー的な夢を重ねることでグローバリゼーションの作用をいっそう悪化させています。

それに比べて、日本は「国家」として機能している。政治的に何ら決断できないEU諸国と異なり、貿易の依存度も適正水準で、独自の通貨政策もある。

しかし、そんな日本にも問題はある。それは経済問題ではありません。むしろ問題は「人口」と「安全保障」です。高度なロボット技術でも人口問題は解決できない。より多く受け入れるべき移民も根本的な解決策にはならない。女性が仕事と育児を両立できるよう国家が介入し、出生率を上昇させなければ日本は存続できない。愛する日本の消滅など見たくありません。

評者:西 泰志

(週刊文春 2016.11.06掲載)
内容紹介
大ベストセラー『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』に続く第2弾! 現代最高の知識人、トッドの最新見解を集めた“切れ味抜群”の時事論集。テロ、移民、難民、人種差別、経済危機、格差拡大、ポピュリズムなどテーマは多岐にわたるが、いずれも「グローバリズムの限界」という問題につながっている。英国EU離脱、トランプ旋風も、サッチャー、レーガン以来の英米発祥のネオリベラリズムの歴史から、初めてその意味が見えてくる。本書は「最良のトッド入門」でもある。知的遍歴を存分に語る第3章「トッドの歴史の方法」は、他の著作では決して読めない話が満載。「トッドの予言」はいかにして可能なのか? その謎に迫る! 日本オリジナル版。

「一部を例外として本書に収録されたインタビューと講演はすべて日本でおこなわれました。その意味で、これは私が本当の意味で初めて日本で作った本なのです」(「日本の読者へ」より)

「今日の世界の危機は『国家の問題』として捉えなければなりません。中東を始めとして、いま真の脅威になっているのは、『国家の過剰』ではなく『国家の崩壊』です。喫緊に必要なのは、ネオリベラリズムに対抗し、国家を再評価することです」(本文より)

「イギリスのEU離脱は、『西側システム』という概念の終焉を意味しています」(本文より)

出版社からのコメント
現代最高の知識人であるトッド氏の最新見解を集めた日本オリジナルの時事論集です。テロ、移民、難民、人種差別、経済危機、格差拡大、ポピュリズム、英国EU離脱、トランプ旋風など各章のテーマは多岐に亘りますが、実は「グローバリズムの限界」という同じテーマを扱っています。また知的遍歴と独自の分析手法の秘密を存分に語っている第3章「トッドの歴史の方法」は、他の著作では決して読めない話が満載で、「最良のトッド入門」となっています。「トッドの予言」はいかにして可能なのか? その謎に迫る本です。

内容(「BOOK」データベースより)
英国EU離脱とトランプ旋風は、英米という発祥地でのグローバリズムの終焉と「国家」への回帰を意味する。家族構造の変遷が明らかにする「国家」の重要性。未来は歴史から見えてくる!

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
トッド,エマニュエル
1951年生まれ。フランスの歴史人口学者・家族人類学者

堀/茂樹
1952年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部教授(フランス文学・思想)。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

英国の国民選挙でEU離脱を当てたり、トランプ大統領の誕生を予見していた。と言う事で、お!私と同じ考えの人が居ましたね。と天空からの視点で書いてみましたが、凄く有名になったのは、「シャルリとは誰か?」からなのでしょうか?個人的には、有名だと思いますが、知っている人はかなり限られているのかな?と思います。あまり日本には積極的に来日をして、書籍のプロモーションなどはしていないので、知名度としては、それほど高い人ではないかもしれませんね。

歴史人口学者

一般的な人であれば、歴史人口学者と言う肩書きの人にあった事がないと思いますし、そんなジャンルがあるの?と思える感じになるのですが、出来て、そこまで古いジャンルではないです。共産主義が受け入れられた国は根本的に受け入れやすい家族構成が中心だった。とか、ほへー!?と思える点がたくさん書かれています。

日本に対しても言及をされており、移民を受け入れない日本は排他的と言われるけど、日本は完璧な社会で、今の状況に満足をしているケースが多いから、移民を必要としていないだけで、排他的とは違うよね。と言う事が書かれています。たぶん感覚的に合っていると思いますが、人口的には不安定な時代に突入をするよ。と言う警告がされています。

人口問題については、もう勝負付けは済んでいるんですよね。今の二十歳が20年後は四十歳になる訳ですが、減っている事はあっても、自然現象として増える事はありえないの。当たり前でしょう?だけど移民を受け入れる事で、増やせる。と言う事なのですが、個人的には移民反対の立場です。それだと労働者人口が減って国が滅ぶ!と言う人が居ますが、滅べば良いじゃないか。反面教師として、後世が生かしてくれれば、それで良いです。

エマニュエル・トッドとしては、不安定を脱却する為にも、日本は移民を受け入れた方が良いよ。と言うポジションですし、この場合の安定化と言うのは、社会安定の意味合いですね。でも、文化的に異なる移民については徐々に慣れさせる必要があるので、大量の移民ではなく、段階を踏んで行うべきだよ。とトッド先生は書かれています。この場合の段階的はドイツに対してですね。ドイツの場合には、経済的に好調なので、インフラなどの、単純労働者が不足をしていて、それを補う為に大量の移民を受け入れている状態ですが、この状態が続くと、却って不安定になるよ。と警告をしています。

良く読め!家族が家族を殺す

今にして問題になっている訳ではないのですが、日本について書かれている事は所々あります。と言うのも、本書は日本でのインタビューを行った際の記事なども入っているからになるのですが、その中で「家族」の過剰な重視が「家族」を殺す。と言う箇所があります。内容としては、家族を重視する事で、家族の経済的な負担は家族が負うべき。と言う感覚が今広がっていると思いますが、大学進学率などを考慮したり、日本人の寿命を考えた場合の介護などを、金銭的に家族に負う事にさせたら、却って非婚化や少子化が進んで家族を滅ぼす事になるよ。と言う事が書かれているのですが、さー、今の政府はどこを目指しているのでしょうか?

それぞれの考え方が合って良いと思いますが、私は自分の親に遺書だけは書いておいてくれ。と伝えております。いざと言う時には桟橋から背中を押してやる。と伝えております。

問題はエリートの無責任さ

これです。今の世界の問題を一言で表すなら、この一言だと個人的には思います。ポピュリズムと言う単語が一時期的に流行り、何だかしたり顔で、このままではいかん。みたいな事を言っている人が多かった記憶がありますが、バカを言ってはいけない。お前らの言う通りにしてきたのに、何も良い事がなかった!と言う事に気がついた人が増えてこうなったんだろうが。と言う気持ちですかね。

アメリカの大統領選挙に関しては、そもそもアメリカ人でも何でもないですから外野の人間になりますが、トランスヒューマニズムがダメならしゃーない、サンダースにしておけ。アメリカ人にとっても、それがベストな選択肢だろう。と思っていたら、トランプに勝てる訳がねーだろう。と言う、ヒラリーを出してんの。正気か?民主党と思っていたら、ほら、トランプが勝っちゃった。取りあえず、そうなったらなったで、メキシコとの国境の壁だけは作って貰いたいですよね。

難しい内容も多い

エマニュエル・トッドの書籍はどれも面白いと思いますが、一般的な日本人にはちょっと内容的に難しいです。私もさっぱりと分からない点が非常に多かったので、この書籍の半分も理解をしていないと思いますが、欧米における宗教観とか、そうした事も知識として知っておかないと、完全に理解をするのは難しいですよ。

宗教観の違いがある地域ではデモへの参加者や率の違いがある事を発見した。とか書かれても、え?すみません。その宗教観の違いが、さらっと書かれているのですが、意味が分からないです。と言う感じになります。エマニュエル・トッド先生の最新作品もすでに購入済みで、読みたい気持ちで一杯なのですが、最近は途中で止まっている書籍も何冊かあったり、コンビニで購入をしたドラえもんを読みたくてしょうがなかったりと、色々と渋滞を起こしています。

BookLiveで読めます!

こちらの作品はBookLiveと言う電子書籍サイトで読む事が可能です。初回入会の際に、半額クーポンを貰えたりします。また電子書籍に慣れていない人でも入会前に試し読み機能を使う事は可能となりますので、取り合えず、サクッと自分にマッチをしているかどうかを試してみるのが良いと思います。

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